「ねぇ、今日も来てくれたんですね。嬉しいです」 そう言って微笑んだのは、婚活支援サークルで出会った美緒さんだ。 年下というほど若くもないが、僕よりはだいぶ若い。 そのせいだろうか。彼女の笑顔を見るたび、胸の奥がざわつく。 https://youtu.be/jSkfKxbo4KA 「なんか…緊張してる?」 「えっ、いや…少しだけ」 「ふふ。正直でいいですね」 彼女は僕の隣に腰を下ろし、わずかに距離を詰めた。 その瞬間、ふわりと香りが漂った。柔らかくて落ち着く…なのに、どこか甘い、女性の気配を含んだ香り。 ──あぁ、この感覚。 若い頃、好きだった子の髪に顔を寄せたときに感じたような… 忘れていたはずの、ときめき。 「大丈夫? なんだか表情が変わりましたよ」 「いや、なんでも…その、いい香りだなって思って」 「えっ…わ、私の…ですか?」 「うん。なんだか…懐かしくなる」 彼女は顔を赤らめ、視線をそらした。 その姿が、また胸に火をつける。 「そんなふうに言われたの、久しぶりです。嬉しい…」 「僕も、こんな気持ちになるとは思ってなかったよ」 「どんな気持ち?」 「……若返ったみたいだ」 自分で言って照れてしまう。 けれど美緒さんは静かに笑い、僕の手の近くにそっと自分の手を置いた。 触れてはいない。でも、触れそうで、触れない。 この、わずか数センチの距離がたまらなかった。 「私もね…あなたと話すと、落ち着くんです。 なんていうか…安心して、本当の自分でいられる感じ」 彼女はゆっくりと顔を上げ、僕を見つめた。 その瞳は、まるで何かを確かめるように揺れている。 「もし…嫌じゃなかったら、もう少し近くにいてもいい?」 「もちろん。嫌なわけないよ」 「よかった…」 ほんの少し、彼女が体を寄せる。 さっきよりも濃く、香りが触れる。 それだけで、胸の鼓動が若い頃に戻っていく。 「ねぇ…手、繋いでもいいですか?」 「…うん」 彼女の手が触れた瞬間、 温もりが、心の奥の埃を一気に吹き払っていくようだった。 「あなたのその優しさ、もっと知りたい…」 「僕も。君のこと、もっと知りたくなってる」 静かなホールの中で、ふたりの会話だけが小さく響く。 その香りは、確かに僕の中の“忘れていた若さ”を呼び覚ましていた。