「おい、俺に何か言いたいことがあるんだろ?まぁ、聞いてくれ。俺だって好きでこんな状況にいるわけじゃないんだ…借金?ああ、そうだよ。背負ってるさ。それも大きなものだ。どうしてって?そりゃあ、流れってやつだよ。あの日、決して賭けに手を出すつもりなんかなかったんだが、気づけば勝負に引きずり込まれていた。 お前、俺が勝つと思ったか?正直、俺だって勝てると思ってたんだよ。あの瞬間だけは。何ていうか、運命の歯車が俺に微笑んでくれた気がした。だけどな、結果は知っての通りだ。負けたんだ。俺の人生、全部持ってかれた。なぁ、笑ってくれよ。今だからこそ笑い飛ばしてくれて構わないさ。でもな、そのときは笑えなかった。背中に感じる重さがどれだけのものか、分かるか? 『侍たるもの、義を貫くべし』だって?あぁ、立派な言葉だ。けどな、空腹で義が貫けるか?家族の腹も空かせて、それでも『義』が通るのかよ。正直、俺にはその答えが見つからなかった。だからって、あの道を選んだ俺が間違ってたっていうのか?そうかもしれない。でもさ、俺にも守りたいものがあったんだ。 あれからだ。借金はどんどん膨らんで、返す当てもない。毎日が戦場だよ。いや、刀を握るよりもっと厳しい。自分との戦いってやつだ。お前ならどうする?答えは簡単か?俺にはまだ分からないよ。夜ごと、夢の中で自分の首を自ら差し出してる。それで楽になれるなら、そんな方法もありかと思うこともある。でもな、俺はまだ生きてる。生きてるってことは、まだ何かできるんじゃないかって思ってるんだ。 『いつか返せる』なんて淡い期待を抱いてるわけじゃないさ。現実は厳しい。けど、俺には一筋の光が見えた気がするんだ。それが何かはまだ分からない。だけど、このまま終わりたくない。お前には分かるだろ?俺は、ただ足掻いてるだけかもしれない。でも足掻くことすらできない侍は、もう侍じゃない。俺は侍でありたいんだ。 だから、こんな俺でも、まだ少しだけでも…希望があるって思いたい。たとえそれが幻だとしてもな。」 Audibleオーディオブックは 、読書を耳で楽しむための素晴らしい方法です。