ふふ……あなたも、お酒が回ってきたみたいね。
頬がほんのり赤くなって、目がとろんとして……なんだか可愛らしいわ。
え? 私? ふふ、大丈夫よ。こう見えて、お酒には慣れてるの。
旅館をやっているとね、いろんな人と飲む機会があるもの。
でも今夜は、ちょっと違うかもしれないわね。
……あなたと二人きりで、こうして飲むのは初めてでしょう?
ねぇ……少し、こちらに来てくれる?
そう、もっと近くに。
ふふ……驚いた? だって、せっかくの夜なのに、こんなに離れていたらもったいないでしょう?
……あら、そんなに緊張しなくてもいいのよ。
私はただ、少し寄り添いたいだけ。
……ねぇ、聞いてくれる?
私ね、この旅館を継いでから、ずっと“女将”でいることばかり考えてきたの。
お客様には笑顔を見せて、気遣いを忘れず、きちんとした振る舞いを心がけて……
でもね、時々思うの。
私だって、ひとりの女なのに、って。
……ねぇ、そんな顔しないで。
今夜だけは、私を“女将”じゃなくて、“ひとりの女”として見てほしいの。
お願い、少しだけ……甘えさせてくれない?
ふふ……どうしたの? 言葉が出ないの?
……あら、そんなに見つめられると、私まで恥ずかしくなっちゃうわ。
でも……嬉しい。
あなたが、ちゃんと私を“女”として見てくれているって、わかるから。
今夜だけは、いいでしょう?
こうして、お互いの寂しさを忘れさせて……
静かな夜、月明かりだけが、そっと私たちを包んでくれる。
……ふふ。
さぁ、今夜はまだ長いわよ?
ふふ……もう、そんなに固くならなくてもいいのよ。
私が、ほぐしてあげるから。
そっと、あなたの手を取る。
指先にじんわりと温もりが広がって、心地よく絡み合う。
「……ねぇ、もっとこっちへ来て?」
ぽつりと呟くと、あなたはゆっくりと私の隣へ腰を寄せる。
酔いのせいかしら? それとも、違う何かのせい?
頬にそっと触れたあなたの手が、思いのほか熱く感じられる。
「ふふ……驚いた? こんな私を見たことがなかったでしょう?」
いつもは“女将”として振る舞っているけれど
今夜くらいは、私をひとりの女として扱ってほしい。
艶やかに微笑みながら、私はそっとあなたの胸元に額を預ける。
鼓動が聞こえるほどの距離……ふふ、あなたも少し緊張してる?
「ねぇ……ずっとこうしていられたら、いいのにね。」
甘えるような声が、自分のものとは思えない。
でも、あなたの指が私の髪を優しく撫でるたび、私はますます甘えたくなる。
ゆっくりと、着物の襟元に指がかかる。
はだけた胸元に、ふわりと夜の空気が触れ、ひんやりとした感触が走る。
「……あなたのせいよ?」
囁くように言いながら、私はあなたの手を導く。
布の下に隠された熱が、もう隠しきれない。
「ねぇ……責任、取ってくれるんでしょう?」
指が、肌に触れるたび、背筋がぞくりと震える。
障子の向こうには、静まり返った夜の旅館。
今夜、この部屋の中で起こることを、誰も知らない。
ただ、月だけが、静かに見つめていた。
着物や浴衣は日本の伝統的な衣服であり着る人の魅力を引き立てます。
https://www.amazon.co.jp/shop/influencer-316d999d/list/ADLFK95GDLIH
Audibleオーディオブック
https://www.amazon.co.jp/shop/influencer-316d999d/list/RALYVHBJPZXO
コメント
コメントを投稿