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この介護施設は、築年数も古いせいか、どこかひんやりとした空気が漂っていてる


夜勤のシフトって、本当にいろんなことが起こるものなのよね。この施設は、築年数も古いせいか、どこかひんやりとした空気が漂っていて、一人だと時々ゾッとするのよ。

一人だと時々ゾッとするのよ。
一人だと時々ゾッとするのよ。


あの夜も、いつもと同じように静かな夜だった。消灯時間を過ぎ、廊下にはぼんやりとした非常灯の明かりだけ。私は、一番奥の部屋の様子を見に行こうと、カートを押して歩いていた。その部屋は、いつも他の入居者さんとは少し違う、静かすぎるくらい静かな方のお部屋だった。


ドアの前に着いて、そっとノックしようとした、その時。部屋の中から、かすかな、でも確かに、誰かがすすり泣くような声が聞こえた気がしたんです。最初は気のせいかと思った。疲れているのかな、なんて。でも、その声はだんだん大きくなっていくような気がして、私の背筋に冷たいものが走った。


「どなたか…いらっしゃいますか?」


震える声でそう問いかけても、返事はない。ただ、すすり泣く声だけが、ドアの向こうから響いてくる。その声は、まるで私を呼んでいるかのようにも聞こえた。

カートを押して歩いていた。
カートを押して歩いていた。


勇気を出して、ドアノブに手をかけた。ゆっくりとドアを開ける。部屋の中は、真っ暗。カーテンは閉め切られていて、非常灯の明かりさえ届かない。でも、その暗闇の奥から、さっきのすすり泣きが、よりはっきりと聞こえてくる。


「あの…大丈夫ですか?」


もう一度声をかける。すると、暗闇の奥の、ベッドの方から、ゆっくりと何かが動いたような気がした。そして、そのすすり泣きが、ピタリと止まった。


静寂。張り詰めた、恐ろしいほどの静寂。


私は、息を潜めて、暗闇を見つめた。一体、何がいるんだろう。誰かいるんだろうか。その時、暗闇の底から、ゆっくりと、私に向かって、何かが這ってくるような、かすかな音が聞こえてきた。それは、まるで、濡れた布が床を這うような、湿った、ねっとりとした音だった。


背筋が凍る。全身に鳥肌が立った。もう、一刻も早く、この場から逃げ出したかった。でも、足は鉛のように重くて、動かせない。


そして、暗闇の奥から、ぼんやりと、人間の形のようなものが、ゆっくりと姿を現した。それは、まるで、水分を失った干からびたもののように見えたけど、その目は、暗闇の中でも、ギラリと光っているように見えた。


その「何か」は、ゆっくりと、私の方に近づいてくる。すすり泣きの声は、もう聞こえない。代わりに、喉の奥から絞り出すような、かすかな、息遣いだけが、暗闇に響いていた。


私は、ついに悲鳴を上げた。そのまま、後ろに転がるようにして、部屋から飛び出した。ドアを勢いよく閉め、鍵をかけようとした、その時。ドアの向こう側から、バンッ!と、激しくドアを叩く音が響いた。


「開けて…開けてくれ…」

今でも眠れない夜を過ごしている。
今でも眠れない夜を過ごしている。


その声は、すすり泣いていた声とは全く違う、枯れた、恐ろしい声だった。私は、震えながら、その場から逃げ出した。あの夜以来、あの部屋の近くを通るたびに、あの枯れた声と、暗闇の底から見えた光る目が、フラッシュバックして、今でも眠れない夜を過ごしている。



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