荒涼とした大地に沈む夕陽が、赤茶けた大地を染めていく。砂埃が風に舞い上がり、ガンマン、ジャック・レノックスは馬の背に揺られながら静かにその光景を見つめていた。長く伸びる影が彼の疲れ切った顔を縁取る。手には拳銃、そして胸には重い借金の重圧。
「またか…」ジャックは呟く。借金返済のために、彼は何度も何度も命がけの仕事を引き受けてきた。荒くれ者や無法者を追い詰める日々は、すでに心をすり減らしていたが、逃げ場はない。「あの野郎を捕まえれば、少しは楽になるだろうか…」
彼が追う相手、ジョー・バーンズは冷酷な殺し屋で、町中に恐れられている。懸賞金は高額だが、それだけに仕事も危険を伴う。今のジャックにとって、失うものなどほとんど残っていなかった。
「お前も運命だと思えよ、バーンズ…」ジャックは馬を止め、手元の地図を広げた。「町外れの峡谷にいるはずだ…そこにたどり着けば、決着だ」
***
峡谷の中、ひと際大きな岩の陰で、バーンズが待ち伏せしていることは容易に想像できた。ジャックは静かに銃を握りしめた。「ここで決着をつけるぞ…」自分自身に言い聞かせるように呟くと、馬を降り、足音を消して岩場を慎重に進んでいった。
「レノックスか?」背後から冷たい声が響いた。振り返ると、バーンズがそこに立っていた。まるでジャックの動きを全て見透かしているかのような余裕の表情だった。「ずいぶんと遅かったじゃないか」
「お前を追ってここまで来たんだ。遅くなるのも無理はないさ」ジャックは相手を睨みつけながら、じりじりと距離を詰めた。「これで借金も少しは減るってもんだ」
バーンズはにやりと笑った。「借金?くだらないな、そんなもののために命を張るとは…だが、俺はお前を買ってやろう。どうだ、俺の仲間にならないか?もっと稼げる仕事がたくさんあるぜ」
「ふざけるな…俺はそんな道は選ばない」ジャックは即答した。彼の手が銃のグリップに自然と触れ、引き金に指をかけた。「俺は…お前のような人間とは違う」
「ほう、そうか…じゃあ、やるか?」バーンズの目が鋭く光り、手が銃に向かう瞬間、ジャックは一瞬も躊躇せず、引き金を引いた。轟音とともに硝煙が立ち込め、バーンズの体が崩れ落ちる。
静寂が戻り、峡谷には再び風が吹き抜けた。ジャックは拳銃をホルスターに戻し、倒れたバーンズを見下ろした。
「これで、少しは楽になるだろうか…」疲れた声で呟きながら、ジャックは再び馬に跨り、町へ向かって歩き出した。しかし、彼の心の中には、次の賞金稼ぎが待っていることを知っていた。
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