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怪奇事件捜査|見ないでと言ったのに…真夜中の欄間から覗く“影”


 雨が屋根を叩く音で目が覚めた。
 時計を見ると、もう日付が変わっている。
「やだ…またこんな時間に起きちゃって…」
 寝返りを打った瞬間、ふっと視線を感じた。

 欄間。
 暗闇の中、格子の向こうがわずかに揺れている。

https://youtu.be/w3Ih1SOpziU


「……ねえ、見てないわよね?」
 小声で呟きながら布団を胸元まで引き寄せた。夫は単身赴任で家にいない。
 なのに、この数ヶ月、真夜中になると必ず“誰か”の存在を感じるのだ。

 その影は、私が眠れず身じろぎした時だけ現れる。
 まるで、私が起きるのを待っているかのように。

「見ないで…って言ってるのに……」
 そうつぶやいた瞬間、欄間の向こうの暗がりがすうっと動いた。
 心臓がぎゅっと縮む。でも、怖さだけじゃない。
 湿った夜気が素肌を撫で、鼓動がじわじわ熱を帯びていく。

 影は、ゆっくりと欄間の隙間に寄った。
 こちらを覗きこむように。
 私は視線を逸らしきれず、布団の端を強く握りしめた。

「やめてよ…そんな見方……」
 震える声。けれど、どこか甘さが混ざっている。
 影は答えない。ただ、私の言葉に合わせるように形を変え、細長く揺れた。

 その揺れが、まるで息づかいのように見える。

「ほんとに、見ないで…恥ずかしいんだから……」
 口では拒んでいるはずなのに、体は逃げない。
 薄いパジャマの布越しに、夜気が入り込んでいく。

 すると――影がふっと欄間から離れた。
 あれ、いなくなった? と胸がすうっと冷えた瞬間。

 耳元で、かすかな息づかいがした。

「えっ……いつの間に……」
 誰もいないはずなのに、誰かがすぐ横にしゃがみ込んでいるような気配。
 肩にそっと落ちた冷たい空気が、指の形を作る。

「だめよ……そんなふうに触れたら……誤解しちゃうじゃない……」
 言葉が震え、身体が小さく跳ねた。
 影は、まるで私の反応を楽しむように、ゆっくり寄り添う気配を濃くしていく。

 しかし次の瞬間、雷が鳴り、部屋が一瞬だけ明るくなった。
 影がふっと薄れ、欄間の向こうに戻っていく。

「……行っちゃうの?」
 思わず漏れたその声に、自分でも驚く。

 欄間の影が、ひとつだけ小さく揺れた。
 まるで“また来る”と約束するみたいに。

 私は布団を胸に抱き寄せ、そっと目を閉じた。
「……次は、優しくしてね」
 闇は静かに、その言葉だけを抱きしめていた。


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