午前二時、国会の廊下に響くヒールの音。警備カメラには、誰もいないはずの深夜に歩く女性議員の姿が映っていた。
彼女は改革派として注目を浴び、女性の地位向上を訴え続けた新星。しかし翌朝、彼女の議員バッジだけが議場の椅子に置かれていた。血のように赤い口紅の跡とともに。
秘書によると、前夜、彼女は「議事堂の地下で声を聞いた」と怯えていたという。
――“私の代わりに票を入れている人がいる”
その言葉を最後に、彼女は消息を絶った。
やがて、誰もいない議場から女性の笑い声が聞こえるようになり、消灯後の議員宿舎では赤いヒールの足音が続くという。
政治の闇に踏み込みすぎたのか、それともこの国の何かが彼女を拒んだのか。
今も深夜の国会では、議場のひとつの席だけ、誰も座っていないのに“拍手”の音が響く。
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